ハル[하루]

私たちハルは、現在まで継続する「日本の植民地支配による民族自決・人権の否定」を回復し、歴史を記憶しながら日本と韓国(朝鮮半島)のこれからについて考え、語り合い、行動するためのグループです。このブログではそんなハルの活動報告やお知らせを発信していきます!

ハル定例MTGの記録(2022年10月)

こんにちは!ソウル滞在中のもちです!^^

とても寒くなってきたので寒がりのもちには辛い季節ですが、暖かいスープ飲んで乗り切ろうと思います(; ;)

 

今回のMTGはこのような形で進行しました!

 

 

 

○韓国の女性ラッパーたち

 

今回は最初にきりんさんが、韓国のヒップホップシーンと社会との関連について発表してくれました。以下、発表内容を簡単にまとめたものです。

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ラップ音楽が活発な韓国ですが、中でもユン・ミレさんは代表的な女性ラッパー。韓国人の母と黒人の父というルーツを持つ方ですが、『Black Happiness』という曲をはじめ人種差別を題材にしたラップでも有名です。

しかし韓国でも、最初から社会構造に訴えかけるようなラップばかりが存在したわけではなく、人気ラップ番組『SHOW METHE MONEY』も、マッチョな男性ラッパー中心の番組でした。そこへ2015年から『SHOW ME THE MONEY』の女性版とも言える『UNPRETTY RAPSTAR』が放送開始されました。

しかし、お互いをディスるような雰囲気に、大衆は疲れてしまったと言います。ラップは元々マイノリティの発話という背景がありますが、 韓国のラップの主流はマジョリティ男性ラッパー、中には女性を道具にするような歌詞もあったため、ラッパーに対するマイナスなイメージも存在しました。

しかし韓国ラップは成熟を諦めませんでした。2017年放送開始の『高等ラッパー』は『SHOW METHE MONEY』『UNPRETTY RAPSTAR』の高校生版ですが、この番組を通じて韓国のラップシーンに高校生が登場し、一種の社会的弱者として大人たちへ鋭い批判を投げかけるようになります。

特に注目を浴びているのは『高等ラッパー』シーズン3で優勝したイ・ヨンジというラッパーです。ヨンジは「女性はラップに向かない」「女性のラップは本当のラップではない」という男性からの偏見を打ち破り、男女混合大会で唯一優勝した女性ラッパーとして他の女性ラッパーたちにも大きな影響を与えました。

また「互いをディスる」というラップ番組の雰囲気にも変化が見られました。「『高等ラッパー』のシーズン2で作られた曲「バーコード」は精神的に安定した高校生とうつ病の高校生が「光と影」というコンセプトでラップをし、「GoodGirl」という番組では女性ラッパーが協力してラップを完成させる場面が見られました。

 

明治大学リバティアカデミー×人文科学研究所連携公開講座「ラップ音楽と人種、ジェンダー ー2つの『現場』から」を受講して

 

ぶーちゃんさん:ストリートとアカデミックとの関係について「ラップカルチャーの研究でストリートに立ち返ることは重要」という言葉が印象的でした。ラップは知識や言葉から生まれるのではなく、運動を起こすのはストリートであるということです。

またヒップホップフェミニズムについても初めて耳にしましたが、ヒップホップへの向き合い方、発話に対して聞き手がどのように応答するかが重要だという講義にハッとしました。日本でマイノリティとして活動する表現者はたくさんいるが、その声をもっと聞かなければと思いました。

『わたしはラップをやることに決めた』(つやちゃん著、2022年、DU BOOKS)もおすすめです!https://diskunion.net/dubooks/ct/detail/DUBK320

 

きりんさん:かっこよさと政治的正しさが接続しているのがラップの魅力という話もありましたね。また個人的には、アカデミックと運動の現場とのつながりやヒップホップの中でのミソジニーについても言及されていて勉強になりました。

 

フレディさん:アフリカからやってきた音楽が世界中で伝播していくうちにいろいろなものが生み出されているのが面白い一方、民族・ジェンダーなどの問題が発生していると思います。それに対する取り組みが出てきているのも興味ぶかいです。

 

きりんさん: シンポジウムに対して「自分の好きなラップを政治やジェンダーと結びつけるな」というアンケート結果があったことも衝撃でした。

 

茶々丸さん:ラップについてはマイナスなイメージを持っている人が多いと思います。背景を知らないと差別的な態度をとってしまうのではないかと危機感を覚えました。

 

りんごさん:フランスでは黒人によるラップが盛んで、政治批判の文脈も多いです。日本ではそうした点が意識されていないのではないかと思います。例えばパリでは中心部には白人中心の富裕層、周辺部に有色人種や貧民街という風に居住空間が分かれていて、使う言葉も違いますが、そのような状況の中でマジョリティに対して「君たちは社会の中心だと思っているかもしれないが、実は見えていないものばかりで、自分たちは周辺部からの視線も持っているのだ」という歌詞がありますね。

 

あみさん:ラップについては苦手意識があり、「なぜ悪口しか言わないんだろう」と思っていたのですが、協力するラップがあることを知って興味を持ちました。

 

きりんさん:ラップには本来相手へのリスペクトを前提の上で批判をするという点でヘイトとは性質が違う点もあるという説明もありましたね。

 

ぶーちゃんさん:黒人音楽が在日朝鮮人を通して日本での在日朝鮮人解放運動に与えた影響や、川崎の外国ルーツの子どもたちがラップを通して自己表現するような姿も紹介されていました。

 

一方で、日本の音楽シーンや芸能界では、有名歌手が「外国人が日本の土地を奪う」とSNS上で発言するなどの差別的言動があったり、旭日旗の使用など歴史的文脈を無視した表現も多く見られるという指摘がありました。

 

 

○近況報告と今日の感想

サスンさん:モンダンヨンピルの映画祭に参加してきました。

(詳細は前回の韓国オフラインMTGの際に共有されていますので、こちらをご覧ください)

https://krharujp.hatenablog.com/entry/2022/11/11/011534

 

茶々丸さん:私もンダンヨンピルの映画祭に参加して『私はチョソンサラムです』『4.23』を見ました。『4.23』は『ニジノキセキ』のリメイク版ですが、朝鮮学校高校無償化排除反対デモの当事者として「ニジノキセキ」に出てきていた子が大学生になって出演していました。同じ年代の子どもたちがこういう目にあっていることをもっと自覚して行動したいと思いました。

また先月『表現の不自由展 神戸』の手伝いに行きました。テーマが「女性の人権」なのですが、実行委員に女性がごく少数であったこと、飲み会などでも女性差別的な言動が見られるなどしてショックでした。『表現の不自由展 東京』の実行委員会としても活動していたのですが、その時は女性が多かったのですが… 

 

ゆずさん:梨花女子大学に交換留学中で、大学では平和ナビというサークルで活動しています。日本軍「慰安婦」問題や女性学を中心に勉強していて、平和ナビの活動で水曜デモに行ったことがきっかけできりんさんと知り合いました。この前演劇『정희정』をきりんさんと一緒に見に行ったのですが、朝鮮語で「トルボム」という、人のケアをテーマにした演劇です。そうした職業には女性がつくことが多いですが、改めて今の社会が人をケアする仕事を軽視していることを感じました。また『アフターミートゥー』という映画も見にいきましたが、女性が安心して見れる映画でした。

 

きりんさん:『アフターミートゥー』は、 男性教員の女性差別的な発言を契機に始まったスクールミートゥーと、子供の時の性暴力被害を長い時間が経過した後に認識し語り始めた女性など、4つのテーマを題材にした映画です。見に行った時には監督の挨拶もあったのですが、私が女性の声を伝えるドキュメンタリー制作に興味があることもあり、当事者ではない声を記録するときの責任感について質問してみました。監督から、被害女性が「世の中に被害を伝えるために自分の体験を繰り返しいう事になるが、活動家などからは「またその話?」という顔をされることもあった。カメラは表情が無いので良い」と言われたという話があり、とても印象的でした。

 

りんごさん:自分の勉強しているフェミニストスタディーズが一学問としてみなされていないなとよく感じます。マッチョな学問の仲間入りをしなくていいと思う一方で、腑に落ちない感じもします。

 

あみ:きりんさんも運営に関わっていた日韓青年フォーラムに参加してきました。韓国側の参加者には活動家なども多くて知識の差を感じ、自分の視点から見ているものは一面に過ぎないことを忘れていないかと自分自身を振り返るきっかけになりました。

 

きりんさん:ハルでも安心して話せる空間を守りつつ、活動の幅を広げていきたいなと思います。映画、演劇、音楽などクリエイティブな活動もあり。やりたいことをどんどん提案していきましょう!

 

○ 終わりに

音楽と社会に関する話が盛りだくさんで、音楽など芸術分野についてあまり詳しくないもちにはとても新鮮な回でした。またそれぞれの場所で色々な取り組みをしているメンバーの様子を聞いて、もちも改めて自分の在り方について考えさせられました。

 

11月のミーティングは休む予定です。12月のミーティングの記録を楽しみにしてください!